ふくろう絵本屋

福井美佳です。私の活動を紹介します。

油ぼかし「もっきんをたたく もんきち」

黒井健さんの油ぼかし技法を紹介します。

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「もっきんをたたく もんきち」 タント、テレピン油/パステル/色鉛筆/水彩絵具、364 x 257mm

絵本「手ぶくろを買いに」などで有名な、黒井健さんの油ぼかし技法を使ってみました。絵本「さんびきのくま」の木や家、「すずおばあさんのハーモニカ」の庭、「ころわん」シリーズなどの絵も参考にさせていただきました。去年は、清里にある黒井健さんの絵本ハウスにも行きました。原画のていねいな仕上げにため息がでました。

もんきちは、私が製作中の絵本の主人公です。原画はアクリル絵具で描いていますが、木とツリーハウスの表現に悩んでいたので、試しに、油ぼかしでも描いてみました。出来はまだまだですが、同じもんきちくんなのに、油ぼかしで描くとものすごく可愛くなるのでびっくりしました。銅版画のもんきちくんとも雰囲気がまったく違いますよね。油ぼかしだと、グラデーションがなめらかにつきますし、紙の凹凸のせいで白い抜けができて画面が明るくなります。さらに、型紙を使ってキワをきれいに出せる点が、最大の魅力かもしれません。キワは重要ですね。この絵を描いてみたおかげで、アクリル絵具の原画の木もなんとか描くことができました。黒井健さん、ありがとうございます。

学校の先生から、技法や技術の習得も大切だけど、重要なのは、その作家がなぜそのような技法を使ったのか、狙いを理解することだと教わりました。みなさん、伝えたいことを伝えるために、いろいろな技法を探し、技術をみがいているんですよね。ひとつひとつの絵をじっくりみて、努力や挑戦の狙いを読み解けるようになりたいと思います。

黒井健さんの油ぼかしの手順を簡単に紹介します。1.木や、動物の形に紙を切って、型紙を作ります。2.イラストボードなどの硬い紙に、色鉛筆をゴシゴシ塗っておきます。3.ウエスなどの布を指に巻き付けて、指の腹の部分にテレピン油を少しだけつけます。4.油のついた部分でイラストボードの色鉛筆の跡をこすって、布に色をつけます。5.紙に型紙をおいて、布で型紙の抜けた部分をこすって、グラデーション状に色をつけます。6.何度も色を変えて、塗り重ねます。7.動物の毛や影の部分などは色鉛筆ではっきり描きます。私は、最初に水彩絵具で淡ーく下地をつけ、色鉛筆の代わりに主にパステルを使って油ぼかしをしました。型紙の代わりに全体にマスキングシートを貼って、カッターで一部ずつ穴をあけて色をつけました。紙を切らないようにシートをカットするのが大変でした!