ふくろう絵本屋

福井美佳です。私の活動を紹介します。

アクリル絵具「平面化のエチュード」

こんがらがります。

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「平面化のエチュード」ホワイトワトソン、アクリル絵具/鉛筆、652 × 530mm

ひとつの静物を、二つの視点からみた二枚の絵を、一枚の画面に構成する「ダブルイメージ」の作品です。いやー、大変でした〜!まだ完成していませんけど ^^;; 用賀アトリエに行かなければ、こんな絵は一生描かなかったと思います。運命って不思議です。でも、セザンヌさんからキュビズムにいたる実験の最初のステップである、ダブルイメージに挑戦したのは意味のあることでした。二画面分のすべての輪郭線や稜線が交わるところについて、キワを極めて明暗を合わせました。面と線、空間表現と平面について、理解がすすんだように思います。一方、色面化は限定的にしかできず、形の単純化もできず、線もたくさん残ってしまい、平面化にはほど遠い点が残念です。絵が説明的になっちゃった気がします。中学の時に「セザンヌはすごい」が口癖の美術の先生がいらっしゃいましたが、ようやく実感できました。あんな風にさりげなく絵の中に多視点をいれちゃえるのって、やっぱりすごいです。

以下、簡単に手順を説明します。

1.視点を変えて2枚デッサンします

同じモチーフを二カ所から描きます。輪郭線と稜線を描き、軽く明暗をつけておきます。

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2.下地を塗って二枚のデッサンを写します

木製パネルに、ホワイトワトソン紙を水張りし、アクリル絵具(オーク系)を塗って下地を作ります。二枚のデッサンをそれぞれ拡大し、どのように重ねるか、構図を検討します。石膏と石膏、牛骨と牛骨が重なるように構図を決めました。邪魔になりそうなモチーフはいくつか省略します。それぞれのデッサンを拡大コピーし、裏に鉛筆を塗って、下地の上に重ね、ボールペンなどでなぞって、輪郭線と稜線を転写します。見やすいように、転写した鉛筆の線の上から、細い筆を使ってアクリル絵具で輪郭線と稜線を描きます。わかりやすいように、左のデッサンは緑系の絵具、右のデッサンは青系の絵具で描きました。

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3.線の両側を塗り分けます

すべての線の両側を、実際の明暗にあわせて塗り分けます。たとえば、以下の下絵の緑の線は、オレンジ色の布の上のウィスキーの瓶と青い本、青の線はオレンジ色の布の上の牛骨の鼻面を表しています。よって、緑の線のまわりはウィスキーの瓶や本と布の境界を表すように描き、青の線のまわりには牛骨やオレンジ色の布との境界や布の明暗を描きます。緑の線と青い線が交差している部分は、二つの絵がゆるやかに切り替わるようにグラデーション(「片ぼかし」ともいいます)でつなぎます。また、私はうまくできませんでしたが、実際の色にこだわらず、第一のデッサンでも第二のデッサンでもない、第三の色を使って着彩してもおもしろくなります。グラデーションのつなぎ方が難しいです。以下の青い本のように、面積が狭すぎると、線ばかりが目立って透明の入れ物のようになってしまいます。遠くに離れてゆっくり確認しながら、試行錯誤で色をつけていきます。

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なかなか大変です。果てしないです。考えた人たちは偉いです!

この絵と同じ手法で作られた絵3枚も含めて、世田谷美術館 区民ギャラリーAで日曜日の16:30まで展示しております。これまで、ご来場くださったみなさま、ありがとうございます。明日は天候が崩れるようです。みなさま、体調に気をつけてくださいませ。