ふくろう絵本屋

福井美佳です。私の活動を紹介します。

アクリル絵具「フラクタルのエチュード」

絵具を流して模様を作ります。

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フラクタルエチュード」アクリル用キャンバス、アクリル絵具/メディウム、333 × 242mm

アクリル絵具をキャンバスの上に流して、偶発的にできる形状を活かし、筆で加筆して静物を描きました。模様はきれいに出ましたが、石膏の形や明暗がうまく決まらなくて奮闘しました。

絵具をキャンバスに流すドリッピング、ポーリングなどの手法は、20世紀の抽象画家ポロックさんがはじめたそうです。その絵には、自然界によく見られるフラクタル(自己相似)性があると言われています。フラクタル性とは、波や海岸線や木の枝のように、遠くで見たときの大きな形と、近寄って見た細部の形が似ていることをいうようです。用賀アトリエの柴田先生は、90年代に、ドリッピングで得られた偶発的な形と、具象的な形を融合させた絵を描いていたそうです。私の絵の中に、フラクタル性がどの程度出ているかはわかりませんが、見ていて心地よい模様になっていればいいなと思います。

以下、手順を説明します。

1.木製パネルにキャンバスを貼ります

普通、油絵などで使うキャンバスは、枠のみの木枠に貼って使いますが、今回は、画面全体にやすりをかけるので、ベニヤ板に木枠のついた木製パネルを使います。アクリル用キャンバスの上に木枠をおいて、鉛筆で輪郭線を描きます。輪郭線のまわりに、(パネルの厚み)+(1.5~2cm)の幅の折しろをつけて、キャンバスをカットします。折り目をつけて、木製パネルに画鋲でとめます。

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キャンバスを木枠の裏側からキャンバス張り器で挟みながら、テコの原理で、鉛筆の輪郭線より1mm多く引っ張って、ガンタッカーでとめます。タッカーが浮かないように、両手でガンタッカーを押さえて。タッカーでとめる位置の順番は、長辺の中央、その向かい側の長辺の中央、次に短辺の中央とその向かい側、次に長辺の中央の両脇2カ所とその向かい側の2カ所、短辺の中央の両脇2カ所とその向かい側の2カ所、、と対角線状にとめていき、最後に角をとめます。二人で作業すると楽です。

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余ったキャンバスを裏に折り込んで、ぐるっとタッカーでとめます。(タッカーがうまくとめられなくて浮いたり曲がったりしてしまいました)

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2.下地を塗ります

ジェッソ1+モデリングペースト1+ジェルメディウム1+水1の割合で下地剤を混ぜ、さらに、黒いアクリル絵具を少し入れます。

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よく混ぜて、少し粘り気のある灰色の下地剤を作ります。

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キャンバスを布で拭いたあと、刷毛で下地を塗ります。最初に、十字に塗ったあと、全体に塗ります。

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表を塗ったら、脇にも塗ります。

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乾燥させます。新聞紙の上に画鋲を上向きにおいて、その上にキャンバスを載せると、下地が新聞紙に張り付くのを防げます。

3.最下層の黒を塗ります

下地が乾いたら、黒いアクリル絵具を水でといて刷毛にとり、下地が隠れるように刷毛で塗ります。凹凸が残らないようにていねいに3回塗ります。脇にも塗って、新聞紙の上に画鋲を置いて、再度、乾燥させます。

4.ドリッピングします

プラスティックカップに、アクリル絵具2+ポーリングメディウム2+グロスポリマーメディウム1+水1を混ぜます。あまり水を多くすると、周りの色と混ざって模様が出にくくなるので注意してください。3−4色用意します。

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キャンバスの上に、たらします。

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かたむけたり、色を足したり、ちらしたりして、模様を作ります。これは先生のデモンストレーションです。

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私のは、以下のような感じになりました。脇にも流して模様をつけました。新聞紙の上に画鋲をおいて、乾燥させます。

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乾いたら、こうなりました。ポーリングメディウムを混ぜてはいますが、乾くまでの間に少しずつ、色が混ざって模様が変わったりします。

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5.グレーズします

模様の上から、ドリッピングした色とは違う濃いめの色を選んで、塗ります。アクリル絵具とグレージングメディウムを混ぜ、刷毛で表面の凹凸がなくなるように塗ります。以下は、先生が赤を塗ったところです。

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私は紫を塗りました。

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2回塗って、乾燥させました。

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6.ヤスリで削ります

400番か240番の耐水性ヤスリに水をつけて擦ります。

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水をつけたティッシュなどで拭き取りながらヤスリをかけると、模様がみえてきます。

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表面の凹凸がなくなり、きれいな模様が出るまで根気よくヤスリをかけます。下地の上に塗った黒いアクリル絵具の層が見えたら、それ以上は削らないようにします。多く削りたい場合は、もっと粗めのヤスリからはじめて、細かいヤスリで仕上げます。

7.下絵を用意します

今回は、石膏を中心としたモチーフを描きました。

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8.下絵をうつします

下絵をコピーして、念紙などをはさんでキャンバスに写します。アクリル絵具で輪郭線と稜線を描き、画面の明るいところに模様が消えない程度に薄く色をつけます。(稜線とは、明暗が急に変わるところにできる線です。たとえば、以下の絵では、リンゴの光があたって明るい面と暗い面や、石膏の鼻の明るい面と暗い面の間、頬の明るい面と暗い面の間、首や台座の角張ったところに稜線を描きました)

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9.明暗をつけます

アクリル絵具で、模様を極力残しながら、明暗をあわせていきます。明るくしたいのに暗い色の模様が入っていて違和感のあるところは、暗い模様の部分を明るい色で塗ります。逆に、暗いはずなのに明るい色の模様が入っているところには、暗い色を入れます。同じ明暗の領域を一色で塗りつぶすと、模様が消えてつまらなくなってしまうので、気をつけます。たとえば、明るくしたい部分に紺と赤の模様が入っているときは、紺は水色に、赤はピンクに塗り替えると、模様を残したまま明るくすることができます。細かい模様を塗り分けるときは、細い筆を使います。

以下は、目と鼻のところを拡大した部分です。鼻や額に模様が入っていて、明暗がわかりにくくなっています。

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鼻や額で、暗い模様がはいっているところは、同じ明暗になるように別の色を塗り加えていきます。細かい模様が消えてしまっちゃいましたが、おおまかな模様はできるだけ残しました。同じ明暗の色を作るのが難しく、下も額のピンクと緑の明暗が違いますね。

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全部、正確に塗り替える必要はなく、模様をそのまま残すところがあってもいいようです。どこを残して、どこの明暗を調整するかを考えて手を入れます。私は、石膏の頭やリンゴや金属のポットの模様は、あまり手をつけずに残しました。

タイトルは「フラクタルエチュード」としましたが、明暗をあわせる練習になりました!

この絵と同じ手法で作られた絵16枚も含めて、世田谷美術館 区民ギャラリーAで日曜日の16:30まで展示しております。ご来場くださったみなさま、ありがとうございます。みなさま、体調に気をつけてくださいませ。