地味すぎたかもしれません。
「アルファベット動物絵巻(全3巻)」を作ったので、忘れないうちに、絵巻物の制作手順を紹介します。本文は洋紙を使っており、普通の絵巻物とは逆巻きの簡易な作り方です。作り方は、「あなただけの巻物・折り本づくり」(薮田夏秋著)という本を参考にさせていただきました。今回使った材料のうち、紙と笹こはぜ以外は、耕美堂さんからネットで購入しました。
1.本紙を作ります
アルシュ水彩紙300gロール紙を横に三分割して、水彩絵具とコピックマルチライナーで描きました。厚い紙なので裏打ちはしませんでした。ただ、厚いと巻きにくいので、もう少し薄い紙の方が扱いやすかったかもと思います。水張りしなかったら、絵具を載せた部分が波打ってしまいました。あらかじめ、画板などに上下を水張りして描いたら、波打つのを防げたかもしれません。横が長いので、中途半端に水張りすると筋がついてしまうかもしれませんが?
上下のサイズは余裕を持って描き、あとで裁断します。今回は、縦32cmに裁断しました。
2.表紙を作ります
掛け軸用の、あらかじめ裏打ちされた表装布地を使いました。掛け軸と違い、巻物は布を横に使うので、模様に縦横のない布がよいそうです。
横は25cm程度、縦は本紙の仕上がり寸法+6mmで切ります。軸が太い場合や、紙が長い場合は、もっと幅を広くとった方がよいかと思います。
裏返して、上下の端から3mmずつに折り目をつけます。(この写真では、左右になっています。)定規をあてて、下からもちあげると折り目をつけやすいです。折ったところの両端を斜めにカットします。(写真をよく見ると、右の上下の端が斜めになっているのがわかるかと思います)折り目の内側に製本用の糊をつけて、圧着します。
あて布をして、折り目にアイロンをかけて糊を固定します。
上下両方を3mmずつ折って糊でつけた状態です。
表紙の裏に、きれいな紙を貼ります。ここでは、料紙を使いました。上下左右、3cmぐらい大きい料紙を用意します。料紙は、別にネットで買いましたが、もう少し厚い和紙や洋紙でもよかったかもと思います。丸めたり糊で貼ったりするので、とにかく柔らかくて丈夫な紙がむいているようです。
ここでは、料紙ではなく表紙の裏に糊をつけて、上から料紙を貼って、当て紙の上からよくこすって、重しをのせて固定しました。画板を使わなかったせいか、料紙に少ししわがよってしまいました。料紙に糊をつけて表紙に貼ったあと、画板に貼付けて乾かすと、しわが寄らないでよいそうです。
表紙からはみ出ている上下の料紙を、表紙より1mmほど内側で折ります。
折った料紙にカッターをあてて、表紙を切らないように気をつけて、料紙だけを切ります。
料紙からはみ出ている左右の料紙を、表紙より3mm長く切り落とします。
ひょう紙竹をつける方だけ(この写真では右のみ)、はみ出した3mmの料紙に糊をつけて、布をくるむようにはりつけて、アイロンでおさえます。本紙につなげる方の3mmは、のりをつけずにそのままにしておきます。なお、和本の場合は、この写真とは逆の左側のみ、布をくるみます。
3.表紙にひょう紙竹をつけます
ひょう紙竹は、断面が半月型の竹です。手に入らなかったので、掛け軸に使う表木(八双)を使いました。ちょっと、太すぎたようです!もっと細い方が見栄えがよかったように思います。出来上がりの本紙の幅より3mm短く切って、上下を斜めに切り落とします。切り落としの部分も長過ぎました。この写真より短く削った方が見栄えがよかったように思います。
表紙の裏の料紙の、端から5mmののりしろをのこして、ひょう紙竹を糊で貼付けます。
ひょう紙竹の内側の料紙にへらで筋をつけます。
すじをつけた部分から折って、表紙でひょう紙竹をくるみ、へらで筋をつけます。(上の写真と、左右が逆になっていてわかりにくいですね)
表紙を戻して、ひょう紙竹全体と5mmののりしろに糊をつけます。
表紙でひょう紙竹をくるむように貼付けて、よくおさえて、アイロンで圧着します。
4.表紙に紐をつけます
中央に1cmほどの、紐を取り付ける切れ込みをつけます。
1mの紐の両端3cmほどに、糊をつけて乾かします。片方の端から1cmの中央に、1cmほどの切れ込みをいれます。片方の端は1cmほど斜めにきります。表紙の切れ込みに紐を通して、斜めにきった紐の端を、切れ込みをいれた紐の端に通して表紙にとりつけます。
5.尾紙に軸をつけます
今回は紙筒(紙管)を切って、軸先をとりつけて軸として使います。
尾紙は、表紙の裏に貼ったのと同じ料紙を使います。尾紙は、本紙と同じ高さx軸の円周の5-6倍の長さにカットします。今回は、高さ32cmx長さ50cm程度の長さにしました。
軸は、尾紙より少しはみ出るように紙筒をカットします。掛け軸の場合は、軸の直径と同じぐらいの長さの軸先が、上下にそれぞれはみ出るように切るそうです。巻物の場合は、掛け軸よりはみ出方が少なくするそうです。今回は、軸の直径が27mm程度なので、20mmずつはみ出る長さで、紙筒を切りました。
尾紙の表側の右端(巻き始め、和本の場合は左端)から、軸の円周の2倍の位置に折り目をつけます。尾紙の右端の上下3mmずつ短い場所にしるしをつけ、折り目の端にむけて、紙を斜めに切り落とします。(写真の赤い線の位置で切ります。上も同じように斜めに切ります。)尾紙を軸に巻いた時に、紙の巻きはじめの端が見えないように短めにするために、切るのだそうです。
尾紙のまきはじめに1cmほどの幅で糊をつけます。折り目の位置に、軸の上下のはみ出し方が、同じ長さになるように置きます。糊をつけた手前にむけて、軸を転がしていき、紙の端で固定して貼付けます。アイロンで圧着します。
円周の2倍の折り目位置の内側に、1cm幅で糊をつけます。
折り目をのばして、糊の位置にむけて、軸をきっちり転がしていき、貼付けます。アイロンで圧着します。
6.尾紙、本紙、表紙を貼付けます
本紙の右端の裏に3mm幅で糊をつけ、尾紙の左端3mmに重ねて貼付けます。(写真の紙の右端にうっすら糊の部分が見えるかと思います)
本紙の左端のおもてに3mm幅で糊をつけ、表紙から3mmはみだした料紙の部分を重ねて貼付けます。本紙のおもてと、表紙の裏の料紙が隣り合うようにして、布の部分は本紙の裏側と隣り合わせになるよう、裏表に注意します。
紐の端に、笹こはぜをぬいつけます。
洋風な布や料紙を組み合わせてもよかったかもと思っております。紙が厚いので、軸ももっと太くてもよかったかもしれません。ひとまわり小さく印刷して、小さい絵巻物を作ってみるのも手軽でよいかもと思っております。次回は、モダンな雰囲気の絵巻物にチャレンジしてみます。
追記:展示方法について
上の写真でわかるように、絵巻物を壁に貼って展示すると、あまり見栄えがよくないので、絵巻物を作る方は気をつけてください。長い机を用意して、机の上に拡げて見てもらう方が、展示映えするんじゃないかと思います。せっかく手間をかけて作るのですから、展示の方法も工夫してみてはいかがでしょうか。また、以下の記事のように、展示後に折り本にまとめると、読みやすくなるのでおすすめです。