ふくろう絵本屋

福井美佳です。私の活動を紹介します。

アクリル絵具「平面化のエチュード」

こんがらがります。

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「平面化のエチュード」ホワイトワトソン、アクリル絵具/鉛筆、652 × 530mm

ひとつの静物を、二つの視点からみた二枚の絵を、一枚の画面に構成する「ダブルイメージ」の作品です。いやー、大変でした〜!まだ完成していませんけど ^^;; 用賀アトリエに行かなければ、こんな絵は一生描かなかったと思います。運命って不思議です。でも、セザンヌさんからキュビズムにいたる実験の最初のステップである、ダブルイメージに挑戦したのは意味のあることでした。二画面分のすべての輪郭線や稜線が交わるところについて、キワを極めて明暗を合わせました。面と線、空間表現と平面について、理解がすすんだように思います。一方、色面化は限定的にしかできず、形の単純化もできず、線もたくさん残ってしまい、平面化にはほど遠い点が残念です。絵が説明的になっちゃった気がします。中学の時に「セザンヌはすごい」が口癖の美術の先生がいらっしゃいましたが、ようやく実感できました。あんな風にさりげなく絵の中に多視点をいれちゃえるのって、やっぱりすごいです。

以下、簡単に手順を説明します。

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アクリル絵具「フラクタルのエチュード」

絵具を流して模様を作ります。

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フラクタルエチュード」アクリル用キャンバス、アクリル絵具/メディウム、333 × 242mm

アクリル絵具をキャンバスの上に流して、偶発的にできる形状を活かし、筆で加筆して静物を描きました。模様はきれいに出ましたが、石膏の形や明暗がうまく決まらなくて奮闘しました。

絵具をキャンバスに流すドリッピング、ポーリングなどの手法は、20世紀の抽象画家ポロックさんがはじめたそうです。その絵には、自然界によく見られるフラクタル(自己相似)性があると言われています。フラクタル性とは、波や海岸線や木の枝のように、遠くで見たときの大きな形と、近寄って見た細部の形が似ていることをいうようです。用賀アトリエの柴田先生は、90年代に、ドリッピングで得られた偶発的な形と、具象的な形を融合させた絵を描いていたそうです。私の絵の中に、フラクタル性がどの程度出ているかはわかりませんが、見ていて心地よい模様になっていればいいなと思います。

以下、手順を説明します。

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アクリル+パステル「午後4時の音楽会」

誰が演奏するのかな?

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「午後4時の音楽会」 ホワイトワトソン、アクリル絵具/パステル/鉛筆、606×727mm

音楽会のポスターの原画にするつもりで作りました。小鳥やリスもいるのですが、わかりますか?この絵は、F20号の木製パネルにホワイトワトソン紙を水張りして、下絵を鉛筆で写し、アクリル絵具で着彩したあと、明るい部分(動物の毛皮や木の幹の明るいところなど)にパステルを重ねました。アクリルとパステルの併用を活かすため、画面を全部パステルで覆ってしまわないように気をつけました。仕上げはアクリル絵具で暗い部分を引き締めました。遠景、中景、近景の差がついているといいのですが、、、。

なぜ椅子を描かないのか、と聞かれたのですが、自分でもよくわかりません。椅子があると、弾かなくちゃいけない!と思って緊張するせいかな?いろいろな体型の動物が、自分にあった椅子を持ってきて、私の代わりに演奏してくれるとうれしいですね。

この絵も含めて、世田谷美術館 区民ギャラリーAで日曜日の16:30まで展示しております。ご来場くださったみなさま、ありがとうございます。みなさま、くれぐれも体調に気をつけてくださいませ。

世田谷美術館 区民ギャラリーAで3月29日まで展示します

昨日から3月29日(日)まで、世田谷美術館 区民ギャラリーAに展示させていただきます。

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用賀アトリエ展

2020年3月24日(火)-29日(日)10-18時(初日14時より、最終日16時半まで)

世田谷美術館 区民ギャラリーA   〒157-0075 世田谷区砧公園1-2

 アクセス  https://www.setagayaartmuseum.or.jp/guide/access/

去年にひきつづき、絵画教室用賀アトリエの受講生の展覧会に参加しました。

私は5点展示しております。以下の写真の右端の、ピアノと動物の絵「午後4時の音楽会」と、

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以下の平面化構成の右端の、カラスと石膏の「平面化のエチュード」と、

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以下のフラクタル絵画のうち、矢印でさした「フラクタルのエチュード」と、

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以下の写真右端の、裸婦と白い鳥のパステル画と、

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以下の写真右のパステル画「夏の果実」(当ブログで紹介済)です。

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2年間、用賀アトリエに週二日ほど通って、絵画の基礎を学びました。特にこの1年は、画面構成や明暗の調整によって画面の中に空間を作り上げる方法と、パステルの使い方を学びました。課題をやる前は難しくて無理!と思うのですが、学ぶべき点が明確になっており、じっくり考えながら挑戦するうち、少しずつ目が鍛えられてきたように思います。良い絵本の制作に役立てたい、と思ってます。どんな疑問にも優しく答えて下さる先生方と、真面目で熱心な同級生のみなさんに感謝しております。

時節柄、お誘いはいたしませんが、展示作品の写真を掲載しますので、雰囲気を感じていただければと思います。

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シールステンシル+消しゴムハンコ「ふしぎなキャンディー屋さん」

絵本の読み聞かせの会で配った絵その4です。 

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「ふしぎなキャンディー屋さん」ホワイトワトソン、シールステンシル/消しゴムハンコ/スタンプ用インク 148×100mm

「ふしぎなキャンディー屋さん」(宮西達也さん作)を題材にさせていただきました。

シール用紙を、丸型のパンチで抜いて、ホワイトワトソン紙に貼ります。薄いピンクのスタンプインクをつけたローラーで、紙全体にうっすら色をつけます。丸型の消しゴムハンコを作って、いろいろな色のスタンプインクをつけて何カ所か押印します。オオカミの消しゴムハンコで、何カ所か押印します。シール用紙を豚型にくり抜いて、上から貼ります。豚型のシール用紙からはみ出している丸部分の上に、丸型のシールを貼って隠します。豚の目と鼻の穴の部分に、スタンプ台を直接押し付けて着彩します。小さなスタンプ台の角を使うとやりやすいです。

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シールステンシル+消しゴムハンコ「チョコラボンボンの実の木」

絵本の読み聞かせの会で配った絵その3です。 

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「チョコラボンボンの実の木」ホワイトワトソン、シールステンシル/消しゴムハンコ/スタンプ用インク 148×100mm

「ガブルくんとコウモリオニ」(高谷まちこさん作)より、チョコラボンボンの実の木を題材にさせていただきました。

オオカミと木の実の消しゴムハンコを作って、ホワイトワトソン紙に押印します。コピー用紙で、木の幹部分を切り抜いた型を作り、裏にスプレー糊をつけて貼ります。木の幹部分に、スタンプ用インクをつけて着彩します。コピー用紙で隠れている絵柄が、うっすら見えていますね。

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木の幹部分、全部に着彩します。

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シールをはがすと隠れていた木の実とオオカミの図案があらわれます。

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木の実の消しゴムハンコを少し押し足して、完成です。

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小さいハンコで、ちまちま押すのも楽しいですね!

シールステンシル+消しゴムハンコ「雪の結晶2」

絵本の読み聞かせの会で配った絵その2です。 

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「雪の結晶2」ホワイトワトソン、シールステンシル/消しゴムハンコ/スタンプ用インク 148×100mm

大きい雪の結晶が印象的だったせいか、お子さん達に一番人気がありました。

コピー用紙を12分割に折って、雪の結晶型に切って、裏にはがせるスプレー糊をつけて、雪の結晶のシールを作り、ホワイトワトソン紙に貼ります。ペンギンや雪の結晶の消しゴムハンコを作って、押印します。コピー用紙に、消しゴムハンコでペンギンを押して、裏にスプレー糊をつけてシールを作ります。ホワイトワトソン紙に押したペンギンを隠すように、ペンギンシールを貼って覆います。ローラーで全体を着彩します。雪の結晶とペンギンのシールをはがして完成です。

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はがすときの楽しみもひとしおです。

さらに、白いインクをつけて、雪の結晶の消しゴムハンコを押印します。

シールステンシル+消しゴムハンコ「雪の結晶1」

絵本の読み聞かせの会で配りました。

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「雪の結晶1」ホワイトワトソン、シールステンシル/消しゴムハンコ/スタンプ用インク 148×100mm

先日、読み聞かせの会のお手伝いをしたときに、立ち寄ってくれたお子さんに1枚ずつさしあげました。消しゴムハンコなどの、事前準備は自宅でやっておき、最後のステンシル作業のみ、読み聞かせの後に、お子さん達にそれぞれ手伝って完成してもらいました。シールステンシルは、はじめてやりましたが、簡単で驚きがあって楽しいものでした。

以下、簡単に作り方を紹介します。

1.シール用紙を貼り、消しゴムハンコで捺印します

シール用紙を、雪型のパンチで抜いて、ホワイトワトソン紙に貼ります。シール用紙は、市販のステンシル用のシール用紙、または、コピー用紙を切り抜いて裏にはがせるスプレー糊をつけて使いました。ペンギンと雪の結晶の消しゴムハンコを作り、スタンプ用インクをつけて、ホワイトワトソン紙に押印します。別のコピー用紙に、ペンギンの消しゴムハンコで捺印し、ペンギンの形に切り取って、ホワイトワトソンのペンギンの上に貼ります。

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2.シールの上からインクをつけます

ローラーにスタンプインクをつけて、シールを貼ったホワイトワトソン紙の上で転がして、全体に着彩します。

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3.消しゴムハンコで捺印します

さらに、白いインクをつけて、雪の結晶の消しゴムハンコを押印します。(お子さんにやってもらったときは、時間がかかるので、この工程は省きました)

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4.シールをはがします

雪のシールをはがすと、下の白い部分が見えてきます。

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ペンギンのシールをはがすと、最初に押しておいたペンギンがあらわれます。完成です。

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インクがすぐにかわくので、手が汚れないのがうれしいです。

以下は、来てくださったお子さん(5歳ぐらい)が2,4の作業をやってくださったものです。ボール紙からホワイトワトソン紙をはがして、透明の袋に入れて渡しました。こっちの方がきれい!

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使い終わった消しゴムハンコとローラーは、スタンプインク用のクリーナーで洗います。 

今回は、お子さんにその場で作業してもらうため、速乾性で発色がよい市販のスタンプを使いましたが、水彩絵具やアクリル絵具などをインクとして使うこともできます。以下、手持ちの市販スタンプの色見本です。全部ツキネコさんの商品でした。

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今回、絵本にちなんで、雪の結晶とペンギンとおおかみと豚をモチーフに4案作りました。残りの3案は、順次掲載します。

 

年賀状「2020 REIWA2 Mice」

みなさまのご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

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「2020 REIWA2 Mices」 マーメイド、パステル/photoshop 257×182mm

年初の挨拶が遅くなってしまいました。みなさま、すでに、良いお年をお迎えになっていらっしゃることと存じます。

今年の年賀状は、茶色(ひはだ)のマーメイド紙にパステルで描いて、「HAPPY NEW YEAR!」の文字をphotoshopで追加しました。ねずみさんたちが「REIWA2」というアルファベットになって、ピアノを演奏しようとがんばっています。鍵盤の表面の肌触りがよさそうなところが気に入っています。私も小さくなって弾いてみたい。アルファベットの文字がわかりにくくてすみませぬ。パステルやパステル色鉛筆だと、細かいところを表現するのが難しいですね。肝心の「2020」の文字をもっと大きくすればよかったかな。などなど、いろいろ反省はありますが、今年も年賀状を作ることができて本当によかったです。一年間がんばって、良い年にしたいなと思います。

 

 

紙版画「雪の家」

今年は紙版画でクリスマスカードを作りました。

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「雪の家」NTラシャ、紙版画(ホワイトワトソン)/消しゴムハンコ/水彩絵具 148×100mm

紙版画は武蔵野美術学園の時の先生に教えていただきました。木版は木を掘って、消しゴムハンコは消しゴムを削って版を作りますが、紙版画は厚紙を切り分けて版として使います。素朴な雰囲気が魅力です。細かく版を分ければ緻密な表現も可能らしいのですが、位置合わせと明暗調整が難しいので、私は素朴狙いでいきます。家の赤い部分のみ、消しゴムハンコです。こちらは青いNTラシャに刷りました。

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こちらは、黒いNTラシャに刷ったものです。刷る紙の色や凹凸で、雰囲気が変わります。文字がつぶれて読みにくくなっちゃいました。

以下、簡単に紙版画の工程を説明します。

1.厚紙に下絵を描き、切り分けて版を作ります

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厚手のハガキサイズのホワイトワトソン紙を使って、紙版を作ります。原画を描いて、文字の部分のみ、カッターナイフで切り抜いたところです。

2.紙版パーツごとに裏に絵具を塗って、刷ります

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厚紙を全部切り抜いて紙版パーツを作ります。家は消しゴムハンコで作りました。写真は、紙版パーツを裏から見たところです。紙版画部分が15版(雪の部分(1)+空(1)+木(13))と消しゴムハンコ1版、全部で16版です。薄くて面積の広いパーツから裏に絵具を塗って、刷ります。

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まず、雪部分の紙版パーツを切り抜き、裏に水彩絵具を塗って、黒いNTラシャに載せて、上から擦って写しました。

今回は、不透明水彩絵具と透明水彩絵具を併用しました。紙版パーツの裏に絵具をつける際は、筆で塗ったり、紙パレットに絵具を拡げてインクパッド代わりに使いました。絵具の水加減、紙版や刷る紙の材質や表面の凹凸によって、仕上がりが変わります。この写真は、絵具が濃すぎてべったりついてしまった部分と、水を混ぜすぎてうまくのらなかったところがムラになってしまいました。

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こちらは、紺のNTラシャに、雪部分と空部分を刷ったところです。これぐらいの絵具の濃さがいいですね。

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木の部分の三角形の小さい紙版パーツを切り抜いて、薄い色から順に刷っていき、最後に家の壁を消しゴムハンコで押して完成です。まず、雪と空だけの2版で40枚ほど刷って、よく刷れたもの10枚を選んで、木の部分と家を刷りました。小さい紙版パーツで刷る時は、ピンセットを使うとよいと思います。

紙を切るので、紙版画の方が消しゴムハンコより版作りが楽でした。厚手の水彩紙は丈夫なので、何度も刷るときにおすすめです。一方、紙版画の方が、絵具の水加減は難しいと感じました。紙で細かいパーツを作って刷っても、うまく絵具が載らないと境界がくっきりしません。今回、一部の木の紙版パーツにカッターでギザギザをつけたのですが、刷り上がりをよく見ないと凹凸がわかりません。隣り合う場所の境界がわかるように、明暗差をつけるのが重要だと改めて思いました。消しゴムハンコの方が絵具が載りやすく、境界がぱきっとします。文字の部分が狭すぎると埋まっちゃうのは消しゴムも紙も同じですね。